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さいき社会保険労務士事務所

            メールマガジン 202503号

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確かな知識と経験、
その上に乗せる「等身大の愛と情熱」で
「生産性が高く離職率の低い職場づくり」
を実現する「さいき社会保険労務士事務所」。
月イチの情報発信です。

―本号の記事――――――――――――――――――――――

本年4月より改正育児介護休業法がスタート。
従業員様の出産・育児の環境の変化を解説
します。

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昨年10月号の記事でもお伝えしておりました
従業員様の育児についてのトピックですが、
本年4月より再び法改正となり、
事業主様にとって
育児への更なる協力が必要になる改正点と、
それとは別に、
育児に関する制度全体の趣きが変わり、
従業員様の今後の動向に大きな変化を
起こし得る改正点がいくつかありました。

(厚生労働省リーフレット)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf

本号では、変更点や今後見込まれる変化を
ポイント毎に解説させていただきます。

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(1)育児支援の制度拡大

まずは、従業員様の出産・育児における
支援制度(事業主様にとっては支援の義務)
が拡大したところを紹介していきます。

①「子の看護休暇」取得対象の延長・拡大

  “お子様の小学校入学まで取得可能”
  から“小学校3年生まで取得可能”に
  延長され、また、入学式・卒園式での
  取得も可能になりました。

②「所定時間外労働の制限」可能期間の延長

  “お子様が3歳になるまで制限可能”から
  “お子様の小学校入学まで制限可能”に
  延長されました。

③「3歳から小学校入学までの育児」への
  会社支援の新たな義務化

  以下の5項目から2項目を選択し
  社内制度として設けることが会社に
  義務付けられました。

  (ⅰ)始業終業時刻の変更
  (ⅱ)月10日以上のテレワーク許可
  (ⅲ)保育施設の設置または利用支援
  (Ⅳ)養育両立支援休暇(年10日以上)
  (ⅴ)短時間勤務制度

いずれも社内規程の整備から対応が必要ですが、
厚生労働省のサイトでは規程例も公開されて
いますので、独自の社内制度を設けない場合は
そのままで転用していただければ十分かと
思います。

問題はやはり制度の拡大分の代替人員の確保
ということになります。こちらに関しましては
以前にも述べました通り、計画的な採用を
極力先回りして行なっていただくこと、また、
契約社員や派遣労働者など多様な形態の従業員
の活用もご検討いただくべきかと思います。

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(2)育児「休業」から育児「短時間勤務」へ

今回は育児介護休業法の改正に合わせ、
雇用保険の給付金制度にも変更がなされました。
実は育児介護休業法自体の改正よりも
雇用保険制度の変更の方に政府の政策的な意図が
ハッキリと垣間見えており、
給付金の差配によって従業員様の行動にも明確な
変化が表れてくることが予想されています。

予想される変化の一つ目は、これまで一般に
お子様が2歳になるまで取得されるケースの
多かった育児休業の期間が1歳までに短縮され、
お子様の1歳の誕生日以降は育児短時間勤務で
職場復帰される方がかなり増えるであろうという
ことです。

給付金制度変更①
「育児休業給付金」延長申請時の審査厳格化
https://www.mhlw.go.jp/content/001269748.pdf

育児休業給付金の支給要件は主に
(A)お仕事を休業されており、なおかつ
(B)(お子様が1歳以上の場合は)お子様を
   保育施設に預けることができていないこと
ですが、これに
「保育施設の申込みを積極的に行っていること」
という要件が加わりました。

どういうことかピンと来ない方もいるかと
思いますが、実は多くの自治体の保育施設の
申込書には「入所を積極的には希望しない」旨を
申告できる欄があり、これまで、1歳以降の
育児休業を希望する方はこの欄を使って
「子を保育施設に預けることができていない」
という要件をクリアしていました。

このため今後は都市部等、実際に保育施設が不足
している地域を除き、大幅に1歳以降の育児休業
が減少することが予想されます。

給付金制度変更②
「育児時短就業給付金」の創設
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001395073.pdf

お子様が2歳に達するまでの間、
育児短時間勤務となった方には、各月の給与の
10%相当額が「育児時短就業給付金」として支給
されるようになりました。
(賃金が従前の額の90%以上の場合は一部逓減)

これにより、「子の1歳の誕生日までは育児休業」
「子が1歳になったら短時間勤務で職場復帰」と
いう形が定番化することが予想されます。

事業主様からすると、これまでより早期の従業員
の復帰が期待できることになります。

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(3)お子様出生直後の男性の育児休業が更に増化

お子様出産後の女性の職場復帰が早まる一方、
男性職員の育児休業取得の増加が見込まれる
制度変更もありました。

給付金制度変更③
「出生後休業支援給付金」の創設
https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/content/contents/002098800.pdf

お子様出生後の8週間の間に
(いわゆる「産後パパ育休」の対象期間中に)
父親が14日以上の育児休業を取得することを
条件に、父親・母親両方の育児休業給付金に
上乗せされる形で「出生後休業支援給付金」が
支給されることになりました。
(育児休業の最初の28日間)

給付金額は休業開始前賃金の13%ですので
育児休業給付金の67%と合わせれば80%となり
これが非課税であること、社会保険料も休業中
免除されることを更に加味すると
給付金受給中の期間は元々の給与の手取り額と
同額の収入を維持できる計算になります。

これまでの給付金と異なり、両親の一方が
育児休業を取得したことでもう一方の親にも
給付金が支給されることになり、
制度の仕組みからくる心理的なインパクトは
かなり大きいと考えられます。

このため、今後は男性職員からも
お子様の出生に関する事前の申告を収集し
当該職員が休業した場合の対応準備ができるよう
社内周知を行っていく必要が生じます。

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今回の育児に関する法改正の主だったところは
以上になります。

本稿では触れませんでしたが、事業主様には
従業員へ向けた育児に関する情報周知そのものが
義務化されることとなりましたので、
これを機に、男性職員も含めた出産育児に関する
社内の連絡体制の整備、運用時の各種書類の雛形
のご準備等、進めていただけると宜しいかと
存じます。

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