――――――――――――――――――――――――――――――
さいき社会保険労務士事務所
メールマガジン 202504号
――――――――――――――――――――――――――――――
確かな知識と経験、
その上に乗せる「等身大の愛と情熱」で
「生産性が高く離職率の低い職場づくり」
を実現する「さいき社会保険労務士事務所」。
月イチの情報発信です。
―本号の記事――――――――――――――――――――――
ポストコロナで再び活況、
外国人雇用の基本知識をおまとめします。
――――――――――――――――――――――――――――
外国人従業員の雇用については、かつては
製造業の出稼ぎ労働者、飲食店の留学生アルバイト
が多くを占めていましたが、昨今は
少子高齢化が進んだ我国の人口構造そのままに
ありとあらゆる業種にごく普通に外国籍の方が
入職される様になってきた印象があります。
今後、「初めての外国人従業員の採用」を
検討される事業主様も多くなるかと思いますので、
一通りの基本知識を挙げてみます。
(厚生労働省リーフレット)
https://www.mhlw.go.jp/content/001261978.pdf
●--------------●
(1)在留カードの確認
外国籍の方を採用する際には、在留カードにて必ず
確認しなければならない事があります。
①在留期間(満了日)
在留期間が過ぎていないか、
また、満了日が近い場合は更新手続きを進めて
いるかご確認ください。
②就労制限の有無
「就労不可」の記載なら勿論雇用できませんが
この場合でも在留資格が家族滞在や留学の場合は
カードの裏面に「許可:原則週28時間以内~」と
判子が押されているケースがありますので
併せてご確認ください。
①②とも時間の経過とともに有効無効が変わって
くるものですので、十分お気を付け下さい。
最近お見掛けしたケースですと、
「3月31日までアルバイトとして雇っていた
留学生が学校を卒業したので正社員採用した」
と社長様からお話を伺い、それではと在留カードを
見せていただいたところ、在留資格は「留学」から
「技術・人文知識・国際業務」へと確かに変わって
いたのですが、その発行日が「4月10日」と
なってしまっている従業員様がいらっしゃいました。
この場合は
3月31日まで → アルバイトとして就労可
4月10日以降 → 正社員として就労可
ですが、4月1日~4月9日の9日間は
留学生の資格もなく労働者の資格もない期間と
なってしまうため、雇用不可の期間であったこと
になります。
当然、仮にその期間何かしら労働に近しいことを
していたとしても違法になってしまうため
社長様にはその旨をお伝えし、何らかのご対応を
ご検討いただくこととなった訳ですが・・。
(詳細は伏せますが・・)
どうしてこのように4月1日付での資格変更が
できなかったのかを解説しますと、
要はこの時期同様の手続きが集中するため役所の
キャパ的に変更手続きが間に合わなくなることが
多くあるようです。
こうならない為には早めの手続き申請を行なうか、
または(これはハローワークで伺った話ですが)
早い時期(役所の込み合っていない12月まで)
に就職活動を目的とした「特定活動」の資格を
一旦取得することで、万が一
卒業と同時に在留資格を変更できなくても
一時的にアルバイト等を続けることができるよう
になるようです。
※詳細は出入国在留管理局にお問い合わせの上
お進めいただけますと幸いです。
●--------------●
(2)「特別永住者」について
外国籍の方の中には「特別永住者」として
労働行政での扱いが日本人と同様になっている方が
いらっしゃいます。
主に在日韓国人、在日朝鮮人、台湾人で終戦時に
日本国籍を取得していた方々がこれにあたります。
入職時に在留カードの提出を求めた際に
特別永住者である旨申し出られた場合は
「特別永住者証明書」を提示いただきご確認ください。
●--------------●
(3)社会保険の資格取得のお手続き
社会保険(健康保険・厚生年金保険)制度は
国籍を問わず、日本に所在する法人等に雇用される
全労働者が対象となりますので、外国籍の従業員も
日本人同様に被保険者となります。
基本的に日本人と扱いや手続きの方法も
変わりませんが、一点、違うのが
日本年金機構に登録される氏名の記載についてです。
(=「健康保険資格確認書(保険証)」の氏名)
外国籍の方の氏名は公的には
住民基本台帳(住民票の元)により
アルファベット表記で登録されているものですが、
日本年金機構のデータベースの氏名欄では
「氏名のアルファベット表記」ができないため、
任意のカタカナで被保険者としての氏名登録を
行なう必要が生じます。
住民基本台帳にあらかじめフリガナや漢字での
通称を登録されている場合はそちらを使用しますが
そうでない場合は、ご本人様にカタカナ表記の
氏名を何とするか事前にお決めいただく必要が
あります。
●--------------●
(4)ハローワークへの届出(雇用保険等)
雇用保険についても日本人同様の扱いとなりますが
外国人の場合は雇用保険の対象者
(労働時間週20時間以上の労働者)に
該当しない場合でも、
入職時および退職時に「外国人雇用状況届出書」を
提出しなければなりません。
こちらでは在留カードの内容の詳細を届出すること
になります。また、氏名の登録は労働局の
データベースの仕様上、カタカナでの登録になります。
なお、特別永住者については
「外国人雇用状況届出書」の届出は必要ありません。
●--------------●
(5)所得税・住民税、年末調整での扱い
税務でも扱いは日本人と同じになりますが、
外国籍の方の年末調整・確定申告で頻繁に
トピックになるのが
国外に居住する家族の扶養認定条件です。
日本人の従業員の家族が外国に留学等をする場合
と異なり、外国籍の方が外国の家族の扶養認定を
受けるにはそれ相応の証明書類が必要になります。
① 対象者に年間38万円以上送金している
ことを証明できる書類(金融機関の記録等)
② 対象者と本人が親族であることを証明できる
公的書類(日本でいうところの戸籍謄本)
③ ②を日本語に翻訳した書類
特に入社後初回の年末調整を行う際には②と③を
ご用意いただくのにかなりの時間を要することに
なりますので、お早目にご準備いただけるよう
従業員様にご要請ください。
※③に関しては業者さんに依頼されることが
多いようです。
●--------------●
(6)海外在住のご家族の健康保険での扶養
2020年の法改正により、日本国内に住所を持たず、
かつ日本国内に生活の基礎を持たない方を
健康保険上の扶養に入れることは
できなくなりました。
●--------------●
以上、外国籍の方の雇用において必要な
社会保険と税の情報をおまとめいたしました。
この他にも日常生活のケアや言葉の壁、文化の壁
など、考慮すべきところは多々ありますので
初めての外国人雇用をご検討の際には
事前の情報収集、リスクとメリットの比較を
入念に行っていただけますと幸いです。
――――――――――――――――――――――――――――――