――――――――――――――――――――――――――――
さいき社会保険労務士事務所
メールマガジン 202410号
――――――――――――――――――――――――――――
確かな知識と経験、
その上に乗せる「等身大の愛と情熱」で
「生産性が高く離職率の低い職場づくり」
を実現する「さいき社会保険労務士事務所」。
月イチの情報発信です。
―本号の記事――――――――――――――――――――――
男性の取得も増加中。「育児休業」を
取り巻く「従業員と事業主」の
「権利と義務」を解説します。
――――――――――――――――――――――――――――
事業主様にとって頭の片隅に入れざる負えない
のが、従業員さんの育児休業の問題。
もちろん、従業員さんのワークライフバランス
を豊かなものにしてあげたいのは皆さま山々
だと思われますが、経営をしっかり安定させる
のも事業主の責務。
余剰人員を抱えて結果として従業員さんに
辛い思いをさせることにならないよう、
制度としてどこまでが義務でどこからが任意
なのか、正確に把握したうえで人員計画を
取って行かねばなりません。
まず「育児」に関する行政・司法の位置付け
ですが、これは完全に
「労働者の権利」=「事業主の義務」という事
で位置付けられています。
事業主目線で言うと、
育児介護休業法で最低線として引かれた線まで
は、従業員の申出を「全て」受け入れなければ
なりません。
※なお「事業主の義務」ではなく
「事業主の努力義務」として法律に位置付け
られているものは、事業主様に余力があれば
任意で認めて良いものですが「労働者の権利」
ではありません。
また、従業員が出産・育児に関する申出を
行ったことを理由として「不利益な扱い」を
してはいけないことが厳密に定められています。
例えば、育児休業から復帰する時に明確な
理由を提示せずに役職から降ろしてしまうと、
それが「不利益な扱い」と取られてしまいます。
「不利益な扱い」に関する裁判は頻繁に起きて
おりますので、「従業員の出産・育児」マター
はトラブルへの発展リスクも併せ持つ
要注意トピックとご認識ください。
以下では「従業員がどこまで申出できるのか」
の最低線(法の下限)を列記します。
●出産育児に関し従業員に認められている事●
(1)妊娠中の保健指導等のための時間確保
妊娠23週までは4週間に1回
妊娠24週-35週は2週間に1回
妊娠36週以後は1週間に1回
(2)産前休暇
出産予定日の6週間前から
(3)産後休暇
出産後8週間
(4)子が1歳になるまでの育児休業
女性-出産後9週目から
男性-出産予定日から
(5)子の1歳~1歳6か月の間の育児休業
※保育園に入園できないか、
配偶者が不在である場合のみ可
(6)子の1歳6か月~2歳の間の育児休業
※保育園に入園できないか、
配偶者が不在である場合のみ可
(7)育児短時間勤務(※他の措置で代替可)
子が3歳になるまで
原則1日6時間勤務
(8)子の看護休暇
子が小学校に入学するまで
(来年4月からは小学3年へ改正)
1年間に5日まで
●--------------●
私が関与してきたお客様を見る限り、
産前の6週間前キッチリか、その数週前から
有給休暇でお休みに入り、産後1年で戻って
来られる方が最も多くなっています。
(産後2年までお休みされる方も3割程度います)
復帰した後に育児短時間勤務になる方は
7割強といったところでしょうか。
また、直近の法改正で育児休業の分割取得が
可能になったことから男性の育児休業も
急激に増えています。
男性の場合、奥様のご出産~1カ月程度を
お休みされるケースが多いですが、
外資系企業の外国人の方ですと割と一般的に
1年間休まれる方がいらっしゃったり、
非外資の日本人の方においてもそういった例
を見るようになってきておりますので、
男性についても、
「概ね1カ月~2ヶ月」、「最大1年超」の
長期休業があり得るものとして
今後は考えていく必要がありそうです。
●--------------●
こうして見ると、育児休業への参画は事業主
にとってかなりの負荷です。
100人規模の事業所ならまだしも
10人規模の事業所であっても同じレベルの
貢献(負荷)を事業主に求めるのが
育児介護休業法の大きな特徴で、
特に新規・小規模事業主にとっては採用の
段階から出産・育児イベントの有無を頭に
入れる必要がある旨、留意が必要です。
また既に育児休業に対応してきた事業所様
でも法改正が断続的に続き実際の育児休業の
取得率と取得期間が拡大している昨今、
現状の人員構成・人員計画で対応可能である
かは改めて確認が必要で、事柄の性質上、
手を打つならば早く動き出すことが必須の
問題でもあります。
(1)現在の人員構成の把握
(2)各自の年齢・性別をもとに今後
育児で生じる欠員のボリュームを把握
(3)欠員が生じた際の補充手段を検討
・正社員、契約社員、パート、派遣
(4)通常の採用にも上記の情報を加味
これらはオーソドックスな施策で元来事業主
様が行われてきたものではあると思いますが
改めて、現在の情勢を鑑み、再検討いただく
ことをお勧めいたします。
それほどまでに、現場レベルで見た
出産・育児に係る従業員様の動向には
変化が現れております故、
本号のテーマとさせていただきました。
――――――――――――――――――――――――――――